人間ドラマ

盗撮と許しの境界線とは?直木賞作【恋とか愛とかやさしさなら】ネタバレ感想

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恋人が性犯罪を犯したら、あなたはどうしますか?

直木賞作家・一穂ミチが放つ衝撃作『恋とか愛とかやさしさなら』は、”信じること”の純度と限界を描き出す、恋愛小説の皮をかぶった社会派問題作です。

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プロポーズされた翌日に彼氏が盗撮で逮捕…最悪のサプライズ

こんな人にオススメ
  • 重めの恋愛小説や心理ドラマが好き
  • 社会問題を扱う現代文学に関心がある
  • 信じること・許すことの本質を深く考えたい
  • 加害者と被害者双方の視点で物語を読みたい
  • 一穂ミチ作品のファン

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「恋とか愛とかやさしさなら」の概要

出版社 / 書籍情報小学館(2024年10月30日発売) / 全1巻・240ページ完結
作者一穂ミチ(直木賞受賞作家)
ジャンル/キーワード女恋愛小説 / ヒューマンドラマ / 社会問題 / 性犯罪 / 心理描写 / 許しと信頼
見れるアプリDMMブックス、Amazon Kindle、楽天Kobo、honto など

『恋とか愛とかやさしさなら』は、2024年10月30日に小学館から刊行された一穂ミチさんの現代小説です。
全1巻で完結しており、ページ数は240ページ。
恋愛と社会問題を巧みに織り交ぜた、読み応えのある一冊となっています。

物語は、恋人の犯罪という衝撃的な出来事から始まり、「信じるとは?」「許すとは?」という普遍的で重厚なテーマ。

恋愛小説でありながら、性犯罪という社会的テーマにも切り込み、人間関係の本質を読者に問いかけてきます。

作者:一穂ミチさん

著者の一穂ミチさんは、BLジャンルで数々の人気作を世に送り出し、一般文芸にも活動の幅を広げている実力派作家です。

2024年には短編集『ツミデミック』で第171回直木賞を受賞し、本作『恋とか愛とかやさしさなら』はその受賞後第一作として注目を集めました。

加えて、2025年の本屋大賞にもノミネートされ、読者・書店員の間でも話題作となっています。

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あらすじと主要なストーリー展開

『恋とか愛とかやさしさなら』は2編から成る構成です。

第1部では、主人公の新夏(にいか)がプロポーズされた翌日に恋人が盗撮で捕まるという衝撃的な事件に直面します。

第2部では、その恋人・啓久(ひらく)の視点から語られる物語です。

第1部「恋とか愛とかやさしさなら」

第1部では、新夏が恋人の犯罪を受け止めきれず、信頼と愛情の間で葛藤する様子が克明に描かれます。

彼女の感情は「怒り」「恥」「戸惑い」「愛しさ」が混在し、読者も一緒に心を揺さぶられる構成になっています。

周囲の人々…啓久の母や姉、新夏の父や友人も、それぞれ異なる価値観を持ち、新夏を取り巻く環境にも影響を与えます。

第2部「恋とか愛とかやさしさより」

第2部では、啓久が過ちとどう向き合うのか、そして被害者の莉子との対話を通じてどのような内面の変化を遂げるのかが描かれます。

彼の「反省」や「再出発」は決して簡単ではなく、罪の重さに対して何が「償い」となり得るのかを読者に問いかけます。

物語全体としては、「許しとは何か」「信じるとはどういう行為か」「他者の過ちにどう向き合うのか」という、非常に深いテーマが根底にあります。

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「もし自分が同じ立場なら?」と考えさせられる余韻の深い作品!

登場人物紹介

関口 新夏(せきぐち にいか)
30歳のフリーカメラマン。報道カメラマンだった父と2人暮らしをしている。
恋人・啓久からプロポーズされ、幸福の絶頂にいたが、その直後の盗撮事件で信じていたものが一気に崩れる。
恋人への愛情と、裏切られた感情の間で揺れ動く。

神尾 啓久(かみお ひらく)
新夏の恋人で、プロポーズの翌日に電車内で盗撮し逮捕される。
第2部では彼の視点から物語が描かれ、罪をどう捉え、どう向き合うかが掘り下げられる。

神尾 真帆子(まほこ)
啓久の姉。かつて性犯罪の被害を受けた経験があり、啓久に対して強い怒りを持っている。
新夏に対しても、啓久を切り捨てるべきだと明確に伝える。

小山内 莉子(おさない りこ)
啓久が盗撮した被害者の女性。物語後半で啓久と対話する存在として登場。
彼女の語りは、被害者の視点から性犯罪の被害の本質を浮かび上がらせる。

葵(あおい)
新夏の友人。現実的な視点で新夏の苦悩に接する。
啓久との関係に「もったいない」と言ったりする、周囲の無理解や他人事的な存在を象徴する人物。

新夏の父
報道カメラマンで、新夏の価値観や職業選択に影響を与えている存在。
過度な感情を表に出さず、新夏の選択を静かに見守る姿勢が印象的。

rico
rico

それぞれが「許し」「信頼」「罪」といったテーマに対してまったく違う立場で向き合ってるのよね…

弟子
弟子

みんな、考え方バラバラよな…。誰も完全に正しくないし、誰も間違ってるって言い切れんし

隊長
隊長

単純に答えは出ない。自分なりの正義を持ってるリアル

作品の見どころを深掘り

  • 繊細な心理描写と感情の揺れ
  • 二部構成で描かれる多層的な視点
  • 「信じること」の純粋さと危うさ

繊細な心理描写と感情の揺れ

本作の大きな魅力のひとつは、主人公・新夏の感情の揺れが驚くほどリアルに描かれている点。

プロポーズの翌日に恋人が盗撮で捕まるという衝撃的な事件にもかかわらず、新夏はただ怒るでも泣くでもなく、「まだ信じたい」という自分自身の気持ちに戸惑います。

怒りや嫌悪、愛情と自己嫌悪が交錯する描写は非常に繊細で、読者はまるで彼女の内面に寄り添いながら読んでいるような感覚になります。

感情を言葉で言い切らない“余白”の多さが、この作品の深みを生んでいます。

二部構成で描かれる多層的な視点

物語は新夏の視点から始まり、後半では加害者である啓久の視点へと移行します。

この二部構成が非常に秀逸で、一方的な被害者/加害者の関係では語れない複雑さを浮き彫りにしています。

啓久の視点が入ることで、彼がどんな気持ちで罪と向き合っているのか、そして“加害者になるとはどういうことか”を読者は否応なく考えることになります。

ただし、彼を擁護する意図ではなく、「理解しようとすること」と「許すこと」の違いを静かに問いかけてくる構成です。

「信じること」の純粋さと危うさ

最も印象的なのは、「信じる」という行為のもろさを真正面から描いている点です。

恋人が過ちを犯したとき、それでも信じられるのか?

信じることは優しさでありながら、同時に無防備で、時に自己犠牲を強いられる行為。

本作では、その「信じる」という言葉の裏にある危うさを描くことで、読者に「もし自分だったら」と真剣に考えさせる力があります。

読者レビューまとめました

ここでは実際に『恋とか愛とかやさしさなら』を読んだ方たちの声を、ポジティブ・ネガティブ両面からまとめてみました。

ポジティブ
  • 恋愛小説としても、社会派小説としても一級品
  • 主人公の葛藤にリアルな感情移入ができる
  • 視点の切り替え(二部構成)が非常に効果的
  • 性犯罪をテーマにしながらも過度に重くなりすぎない
  • 表現が美しく、言葉選びにセンスを感じる
  • 一穂ミチらしい繊細で力強い筆致
  • 読後に考えさせられる余韻が残る
  • 加害者の内面までしっかり掘り下げている点が珍しい
  • 読者自身が「自分ならどうするか」を考えさせられる
  • 小説としての完成度が非常に高い
ネガティブ
  • 文章が短く、物足りなさを感じた
  • すっきりしない結末にモヤモヤが残った
  • 啓久の反省が表面的に感じられる
  • 主人公が悩みすぎて物語が進まないと感じる部分も
  • 啓久の「コスパ」発言が不快だった
  • 性犯罪を扱っているため、読後に重たい気持ちになる
  • 姉・真帆子の行動が過激すぎて共感できなかった
  • 人物描写が多く、混乱する読者も
  • 暗い雰囲気が苦手な人には向かない
  • ラストに明確な答えがないため消化不良になる読者も
rico
rico

啓久の“コスパ発言”は、マジで腹パンしてやりたい

弟子
弟子

コスパで語る時点で、謝罪はもう手段よな

隊長
隊長

あれは“反省”じゃないよね、“自分本位”のただの告白

感想:好きだけど、許せない。許せないけど、好き

「恋とか愛とかやさしさなら」は、恋愛小説と呼ぶにはあまりにも胃が痛い。
「やさしさ」なんてふわふわした単語をタイトルに使っておきながら、内容は二日酔いの胃袋に重めの揚げ物を突っ込んでくる系。

だからこそ読後に「これはただの恋愛の話じゃない」という感想が出るのも当然。

だってこの小説、
「恋人が盗撮犯だったらどうする?」という、出オチで地獄、後は下り坂でさらに地獄、上がる余地なし、

でもなんか泣ける──そんな作品。

前半:新夏の地獄巡り

新夏の「好きだけど、嫌いになれないけど、信じきれない」という葛藤と、
友人葵の「割り切っていいんじゃない?」という意見にわかりみしかない人も多いだろうけど、それが“正しさ”ではないのがこの作品の残酷なところ。

周囲の人間もまた罪深い。

母親は「示談で済んだんだから、まぁいいでしょ」みたいなスタンスで、ある意味一番怖い。
姉は姉で「ブチ切れ」モード、完全に人間火炎放射器。

なのに、新夏だけが「好きと嫌いと信じたいけど信じられない」と、感情の墓場で一人焚火状態…

そして極めつけが、あの電車のシャッター音の描写!あそこは震えた。

反射的恋人を「見てしまう」自分。
信じようとしてるのに、体が警戒する。

もう、そうだよね、

人間ってそう簡単に“元通り”にはならないんだよね。

この冷や水ぶっかけられる感覚。つらすぎる胃痛。

後半:啓久の“人間未満”からの再スタート

こっちはこっちで、加害者視点という、読者にストレス値MAXを要求する設計になってる。

「盗撮はコスパ悪いからやめた」発言には、啓久、お前よ……と言いたい読者も多いと思うが、物語は彼の“ほんの出来心”に、社会がどう牙をむくかをリアルに描いていく。

最も見どころなのは、彼が自助サークルで「俺はあの人たちとは違う」と思ってるシーン。

あれは、ある種すべての“加害経験者”が通る、謎の特権意識であり、痛すぎる自己欺瞞。
そして、それが破壊される瞬間の描写が秀逸。

「お前も同じだよ」と突きつけられるあの冷たさが、逆にこの小説の“やさしさ”なのかもしれない。

莉子との再会と対話も象徴的。被害者と加害者が言葉を交わすことなんて、現実ではほぼ起こらない。

でもそこで語られる「不細工だからショックを受けられて助かってる」なんていう、被害者の“セルフ防衛”がまた地味にしんどい。

誰も得してないし、誰も救われてない。

でも、そこで啓久が「怒ってほしい」と言ったとき、ようやく彼は“他人の痛みに触れる準備ができた”ように見える。

恋、愛、やさしさ、どれも万能じゃないって話

この小説の恐ろしいところは、誰も100%正しくなくて、誰も100%間違ってもいないところ。

怒っていいし、許さなくてもいいし、でもそれでも「好き」が残ってしまう。

だからこそ、人間ってややこしい。
倫理と感情が平行線をたどる中、最後まで読者に「じゃあ、あなたはどうするの?」って問いかけてくる。

で、この問い、正解はないやつ。

『恋とか愛とかやさしさなら』はどこで読める?

現在、『恋とか愛とかやさしさなら』は各種電子書籍ストアや通販サイトで購入可能です。紙書籍・電子版どちらも販売されており、読むスタイルに合わせて選べます。

  • Kindle(Amazon)
     タイミングによっては、30日間無料体験中のKindle Unlimitedで対象になることも。最新の対象状況はAmazonの商品ページで確認するのが安心です。
  • 楽天Kobo
     楽天ポイントを使っての購入や、定期的に配布されるクーポンでお得に買えることもあります。
  • BookLive!/ebookjapan
     これらのストアでは、初回登録時に50%OFFクーポンがもらえることが多く、お試し購入にぴったりです。

無料で読むには?

現時点(2025年5月)では、公式に全文が無料公開されているサイトはありません
ただし、以下の方法を活用すれば、実質無料で読むことも可能です。

  • Kindle Unlimited(無料体験)
    対象期間中であれば、Kindle Unlimitedの30日間無料体験を使って読むことができます。
    登録中に読んで解約すれば、料金はかかりません。
  • 図書館で借りる
    お住まいの地域の図書館に所蔵されていれば、無料で読むことができます
    人気作のため予約待ちになる場合もありますが、費用をかけずに読む選択肢としておすすめです。

総括:やさしさって、甘くない

『恋とか愛とかやさしさなら』は、恋人の裏切りという衝撃的な事件から始まり、「信じること」「許すこと」「人を見つめ直すこと」といった非常に重く、しかし誰もが直面する可能性のあるテーマを描いた作品です。

一穂ミチさんらしい繊細な心理描写が光る本作では、読者は登場人物の苦悩や葛藤を追体験することになります。
中でも、主人公・新夏が揺れる心の中で「人を信じるとはどういうことなのか?」と問い続ける姿勢が、深い共感と考察の余地を与えてくれます。

読者自身の価値観や倫理観を試す一冊であり、「恋」「愛」「やさしさ」といった一見やわらかな言葉の裏にある現実の重さを突きつけられながらも、どこか救いを感じさせるこの物語には、静かな余韻が残ります。

本屋大賞ノミネートもうなずける完成度。
重たいけれど読む価値のある作品を探している人には、ぜひ手に取ってみてほしい一冊です。

rico
rico

恋愛をテーマにしてるくせに、「恋だけではどうにもならない現実」つきつけられた…

弟子
弟子

“許さなきゃ”って自分に言い聞かせる時点で、もう優しさじゃないやろ

隊長
隊長

それでもなお、信じたいと思う…そこが、人間の業だよ

記事のまとめ
  • 『恋とか愛とかやさしさなら』は一穂ミチの直木賞受賞後第一作である
  • 恋人の盗撮事件をきっかけに人間関係の本質を描く物語である
  • 主人公・新夏はカメラマンという職業を通じて「見ること」と向き合う
  • 物語は新夏視点と啓久視点の二部構成となっている
  • 啓久はプロポーズ直後に盗撮で逮捕され、その罪と向き合うことになる
  • 性犯罪をテーマにした作品ながら過度な説明や描写は控えられている
  • 「信じること」や「許すこと」の難しさを中心テーマに据えている
  • 啓久の姉・真帆子など、周囲の人物の視点も倫理的な葛藤を際立たせる
  • 被害者である莉子との対話が啓久の変化を促す重要な転機として描かれる
  • 言葉選びや心理描写が丁寧で余韻が深いと評価されている
  • 読者に「もし自分だったら」と問いかける構成が印象的である
  • 明確な答えを提示せず、問いを残すエンディングが特徴的である
  • 恋愛小説としてだけでなく社会派文学としても高い評価を受けている

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エンタメショップ店員。韓国漫画やアクション、王宮モノ、BL、同人など雑食です。新しい漫画との出会いを、ぜひ一緒に楽しみましょう!
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